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ラムサ風になる [真・聖なる預言]

 私は風になることを望んだ。そのことに何年も何年も思いをめぐらせた。風が私の理想となったのである。風が私のなりたいと願うものだった。私の思考すべてを傾けても、なりたいと思う対象となった。風に思いをめぐらし、そのつかみどころのなさ、軽さといった性質や、認識できるその輪郭に自分を合わせようとした。そして、風に思いをめぐらす過程で、何か正しいものを求め続けた私が、風そのものになったのだ。

 その頃、私は夕刻になるといつもひとりで平原にすわり、月のやわらかな青白い光にじっと見入りながら風に思いを馳せることにしていた。そしてそんなあるとき、驚いたことに突如自分が天界に浮かんでいることに気がついたのだ。下のほうを見ようと首を回したときなど、自分がいったい何者なのかわからなくなってしまったくらいだ。

 すぐに私は、平原のほんの小さな点と化した自分の身体から遠く離れていることを悟った。自分の化身を見下ろしたとき、私は剣を突き立てられて以来、はじめて恐怖を感じた。私を自分の身体に戻したのは、ほかならぬこの恐怖だった。

 私は自分がどこかほかの場所、自分の化身である身体という牢獄から離れたところにいたことを悟り、汗とも冷や汗ともつかぬものに濡れて、目を開いた。私は天国にいるような気分でもあった。自分が風になれたことは、まちがいなかったからだ。私は大地にわが身を投げ、すべての源であり、力であり、ものの始まりの起因であり、そして「風」である神を讃えた。風の優美さ、美しさ、そして豊穣なるその生となることができた、あの最高の瞬間を、私はけっして忘れなかった。そして、そうさせてもらえたのは、私が自分の理想となることを固く決意し、自分がなりたかったものを、いつも思考の中ではっきりと思い描いていたからだと考えた。

(真・聖なる預言より抜粋)



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